すべてはUEFAの受賞式から始まった。
ルカ・モドリッチがUEFA最優秀選手を受賞した、あのモナコの夜だ。
ケイラーが最優秀GK、ラモスが最優秀DF、モドリッチが当然ながら最優秀MF、最優秀フォワードは、クリスティアーノだった。
ここ数年の多くのこの式典がそうであるように、この日も「マドリーずくめ」の夜となった。
レアル・マドリーはクリスティアーノを意識している。
ここ最近、これ見よがしにマドリー系メディアは、意図的にクリスティアーノの名前を盛んに唱えている。
MARCAが、「"新たな"王」とモドリッチの受賞を讃えたのは、その夜の翌日の8月31日。
最も強烈だったのは、第3節のレガネス戦の翌日の、
「最も違いを生み出せるプレイヤー(最優秀ではないが)を保有していたのは、マドリーに多くのメリットをもたらしたが…」
というあからさまな当てつけの1文だろうか。(9月1日)
その翌日(9月2日)には、「脱クリスティアーノ依存」という見出しで、
クリスティアーノがいなくなってベンゼマやベイルが解き放たれたと評し、チームのアンバランスが改善され皆が主役と讃え、
「クリスティアーノは過去」と断じた。
さらにその翌日(9月3日)は、「モドリッチ、バロンドールの最有力」である。
マドリーはほくそ笑んでいるに違いない。
リーグ戦の順調なスタート、ベイル、ベンゼマが結果を残しているのに対し、クリスティアーノがトリノの地でもがき苦しむ現状(セリエA3試合ゴールなし)は、世論形成にはこれ以上ない機会だからだ。
フロレンティーノの33歳のプレイヤーを1億ユーロ超えの価格で売却という決断は正当化され、
さらにはモドリッチのバロンドールを後押しするだろう。
今のところ、レアル・マドリーはクリスティアーノの不在の真価を問われるビッグゲームをまだ経験していない。
クリスティアーノがトリノで得点を重ねない限り、マドリーは彼の幻影を利用するだろう。
通常であれば、マドリー最多スコアラーであり、現バロンドールであるクリスティアーノの離脱は、マドリーにとっては痛恨であったはずで、積極的には持ち出したくない話題のはずだった。
しかし、UEFAがモドリッチを最優秀プレイヤーに選んだことと、あらゆるシチュエーションが、まさにいま、マドリーがクリスティアーノを積極的に名前を出すことにポジティブな側面をもたらしている。
代表ウィークは2週間ある。今回、ポルトガル代表に招集されていないクリスティアーノが活躍することはありえない。その間、ファンはバロンドールは誰か、などと彼について意見を交わしているのだ。
今も、彼はマドリーにメリットをもたらしている。