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【初心者向け】今年のエンバペのあーだこーだについて解説します

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みなさんこんにちは。

ssfm1902です。


2度あることは3度ある、と言いますが、3度目の正直、という言葉もあります。

なぜほぼ反対の意味のことわざがあるのでしょうか。日本語は不思議です。

さて、エンバペの移籍話と言えば、2度や3度どころの話ではなく、もはや夏の季語と言っても過言ではありません。

なのですが、毎年微妙に事情が違うので、「エンバペは移籍しそうですか?」とよくお声がけいただきます。

なので、現在の状況をなるべくわかりやすく説明しようと思います。

移籍話を含めマドリーの最新情報はnoteで書いているので、

これを読んで、今後のことを知りたい!と思ってくださった方は、ググってください(宣伝)

これから書くことはほとんどそこで書いたことばかりで、そのまとめになります。

これまでの(ざっくりとした)あらすじ

昨年の5月、エンバペは大方の予想に反し、パリとの契約を延長しました。

2024年までの2年契約+1年の延長オプション付きのものです。

通常25歳以下のトッププレイヤーの契約において、2年というのは非常に短いです。

PSG(以下パリ)側もエンバペの将来的移籍願望は認識しており、こうなったものと思われます。

レアル・マドリーはこれを受け、エンバペが獲得可能になるのは(早くても)2024年、という認識で補強戦略を考え、今夏はジュード・ベリンガムを銀河系選手として獲得しました。

では、なぜ今騒いでいるのか

2ヶ月前の6月12日、エンバペがパリに書簡を送付したことがメディアによって報じられます。

その内容は、先述の+1年の契約延長オプションを、エンバペ側が行使する意思がないというものでした。


契約延長する気はないが、今夏はパリ残留を希望し、2024年まではパリの選手としてプレーしたいということです。

これはどういうことか。

このままだと2024年にエンバペとパリの契約が切れ、パリは一銭も得ることなく、エンバペを失うリスクがあるということです。

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エンバペ側の背景

本人、両親、弁護士で構成されるエンバペ側がこのタイミングでこの書簡をメディアに漏らす決断をしたのは、ベンゼマのサウジアラビア移籍が影響していると言われています。

レアル・マドリーの攻撃陣は、ベンゼマ-ヴィニシウスは固まっており、確定していないポジションは、エンバペがキャリア初期にのみこなしていた右のフォワードのみであり、移籍をしても彼の得意なポジションがなく、工夫が必要でした。


レアル・マドリーは当初、現状のバロンドールであるベンゼマを2024年まで攻撃の軸として考えており、その後エンバペの獲得による世代交代を目論んでいました。

しかし、ベンゼマが昨季最終節の1日前に、内定していたマドリーとの契約延長を蹴って急遽サウジ行きを決断し、電撃退団しました。


レアル・マドリーのセンターフォワードがいなくなり、ベンゼマの後釜としてすんなりとエンバペが収まる(彼が本来はセカンドストライカーであるという事情は無視すれば)ことが、彼の「クーデター」の背景にあるでしょう。


論点:タイムリミット


サッカーの世界では、残り契約が半年になった時点で、選手は自由に他チームと次の契約することが可能になります。

今回のケースでは、エンバペがこのままパリと契約延長をしないままだと、2024年1月1日より、マドリーはパリを介さずに自由にエンバペと交渉が許可されます。

つまり、今のままだと、レアル・マドリーは2024年7月にエンバペを無料で手に入れることが(理論上)可能になるのです

そのため、パリとすれば移籍金が発生する今夏のうちにエンバペを売却すべきかどうか、という話なのです。


レアル・マドリーにとって時間は有利です。

何しろエンバペが抵抗している限り、待っていれば年明けに移籍金なしでエンバペ獲得が出来ます。

ですから、これを理由に、今夏移籍金を払うにしても、強気の姿勢を取ることが出来ます。

もっとも、ご存知のように、2022年1月も同じ状況でしたが、土壇場で契約に失敗しました。

肝心の最後のサインがないまま、締結されたマドリーとエンバペの仮契約は放置され、最後の最後にパリはエンバペと契約延長をしたのです。

この予想外の展開は、フランス大統領マクロンの言葉がエンバペに影響した(実際に直々に話し合いがあったのは事実のようです)とか、2024年のパリオリンピックとの兼ね合いがどうたらとか、がメディアでは言われましたが、本当のところは分かりません。


エンバペ側の強硬姿勢と態度の悪化

今夏の騒動をややこしくしているのは、エンバペの一方的な態度です。

契約延長をしない、とパリに一方的に突きつけ、その一方で今夏の残留を希望しています。

その後パリとの会話に一切応じようとしません。

つまりパリは事実上、2024年の契約終了を待つことしかできません。

さらに7月9日、France Footballによるエンバペの独占インタビュー(書簡を送る前に収録されたそうです)が公開され、自身のこれまでの活躍を人々が当たり前にとらえているのでは、という文脈において、

「(長年パリでプレーし、あまりにパリの人々に近すぎる存在なので)パリでプレーすることは助けにならない」と答えるなど、自クラブへのリスペクトを欠いた言動を見せています。

これに対しパリは、「クラブより大きな存在はいない」とアル・ケライフィ会長が、明らかにエンバペを指しつつ発言するなど、パリ=エンバペ間の関係がこれまでになく悪化しています。

直近では、フランスリーグが実施する1度目の写真撮影にも応じませんでした。

(もっとも、市場終了後にも2度目のセッションがあり、その際に参加することも出来ます)

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パリの怒り


こうしたエンバペのスタンスを受け、パリは「契約延長か今夏の放出」という姿勢を取り、7月の間、1年の契約延長オプションを行使するようにエンバペに迫り、圧をかけました。

焦点となっているエンバペの現行契約の延長オプションは、行使の場合7月いっぱいが有効期限と契約で定められていました。

7月上旬、アル・ケライフィ会長はルイス・エンリケ新監督就任の発表の際、このことに言及し、

エンバペ側に、遅くとも2週間のうちにクラブに連絡をするよう発言しましたが、エンバペ側から応答はありませんでした。

このため、22日、パリはアジア遠征のメンバーを発表しましたが、ご存知のように、パリは日本・韓国でのアジアツアーにエンバペを帯同させませんでした。

その間、エンバペはパリのPSGキャンパス(練習施設)にて、ワイナルドゥム、ドラクスラーら、パリが戦力外とみなす選手たちと、主力メンバーから隔離され練習を強いられました。この状況は現在も続いています。


8月になってもエンバペ側から応答はなく、契約延長の意思がないとしたパリは、エンバペを市場に出すことにします。

まもなく、パリはサウジアラビアのアル・アハリと、エンバペの移籍で3億ユーロの移籍金で合意し、アル・アハリとエンバペ間の交渉を許可します。

これはクラブ間のみで行われた交渉で、エンバペはアル・アハリとの交渉を拒否し、破談となりました。

同時に8月に入り、パリは来年に希望するクラブへの放出を確約するオプションを付与した上で、エンバペに新たな契約をオファーしましたが、エンバペはこれを直ちに断りました。


相変わらず、エンバペはひとまず現行契約のまま2024年までパリでプレーして、その後は自由に将来を決める、というスタンスを崩しません。

パリは、エンバペとレアル・マドリーとの間に、2024年に入団することで合意する密約があると疑い、契約延長に応じない限り、23-24シーズンを通じて、エンバペを干すことを仄めかしています。

実際に、パリは現在、エンバペなしでチーム作りを進めています。

ベンフィカからセンターフォワードであるゴンサロ・ラモスの獲得が発表され、さらにマルチなフォワードであるフランクフルトのコロムアニ(本人が退団をフランクフルト首脳陣に希望)の獲得にも動いています。

ポジションは違いますが、バルセロナからデンベレ(書類の送付をバルセロナが遅らせており、移籍が遅れている)の獲得も迫っています。

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マドリー、アクションを待つ、、そして睨み合いへ

こうした状況的には有利に見えるレアル・マドリーですが、ある意味パリと共通している点があります。

はっきり言ってレアル・マドリーも、エンバペのことを信じていません。

特に昨年、期待をさせながら直前で裏切られたという思いがあるからです。

レアル・マドリーにとって理想のシナリオは、エンバペがマドリーへの移籍希望を発信することです。

これまで彼の、「マドリーは夢」としつつ、実際の移籍となると何を聞かれてものらりくらりの態度が、この状態を生んだという意識があります。


レアル・マドリーは現時点で、この問題はパリとエンバペ間のメロドラマだと考えており、

自身は当事者ではないというスタンスがあります。

エンバペがレアル・マドリーへの移籍希望をすることではじめて、マドリーは当事者になるというのがマドリーの考えで、エンバペ側からなんらかの媒体や会見で公言することを希望しています。

とはいっても、マドリーはエンバペのキャラクターを理解しているので、実際には彼が希望を公にしようがしまいが、夏の最後にはいずれにせよ市場に出て行かなければならないとも理解しています。

エンバペ側が、自身の希望をより明確に表明したインタビューや記事のようなものを撮影/記録し準備しているという噂もありますが、それが存在するかも、実際に公開されるかもわかりません。

結局、パリ、レアル・マドリー、エンバペの3者の中で、1番強い立場なのはエンバペです。

1年干す、という脅しは契約延長を迫る単なるプレッシャーでしかなく、エンバペ陣営はそれを理解しています。

実際に1年干したとしても、その間パリはエンバペに給料を支払う必要があり、何の得もありません。

マドリーは今夏欲しいのであれば、いずれは交渉に出ていかなければなりません。強者であり続けるには、今夏は来なくてもOKとしなければなりませんが、マドリーは実際には今夏欲しがっています。

だからエンバペからしたら、どうしても今季に移籍したい、交渉をスピードアップさせたいという目的がなければ、このまま移籍希望も言わないほうが得でしょう。

エンバペとしては、移籍希望を公にするより、態度をあいまいにして双方の可能性を残しておいたほうが、両クラブから好条件を引き出せます。

というのも、エンバペとしては、移籍希望を公にしなくても、レアル・マドリーがいずれ仕掛けてくることはわかっているわけです。

何もしなければマドリーが今夏パリにオファーを出さない、というのは想定していないでしょう。

この交渉は、エンバペだけでなく、パリ、レアル・マドリーの3者とも、先に動いたほうが不利になるのです。

パリはレアル・マドリーと交渉を開いてしまえば、マドリーに足元を見られることになります。

レアル・マドリーが先にアプローチをかければ、その逆が起こり、パリの言い値で買わされる可能性が高いでしょう。

もちろんそこでパリの要求額は出せないと来夏まで待つという選択肢はありますが、エンバペは気まぐれです。取れるときに取っておきたいという思いはあるでしょう。

だから、睨み合いが続いているのです。

これがこの泥試合の理由です。

誰かがカードを切るのを、3者とも待っているのです。

移籍が成立するかは、誰が今後どのようにカードを切っていくか、そしてその結果、パリとエンバペの関係が夏の終わりにどうなっているか次第だと思います。

市場が閉じる今年の夏の終わりに、パリがどれだけエンバペにイラついているか、どの程度関係が壊れているか、あるいは修復されているか。

カードが切られないまま、このまま夏以降もリスク覚悟の契約延長交渉続投の可能性もあるでしょう。

そして最終的に、3者の着地点が見つかるかどうか次第、ということで、

あくまで現段階(8/10)時点ではありますが、私の見解としたいと思います。