なんでしょうね。
今季、エンバペが来たらファンも増えたのでしょうが、
ご存知の通り獲得は叶いませんでした。
名鑑を書くにも、新規ファンが増えるか?と言われればまたしても微妙な年になりました。
ラモス、ジダンといった人気の名前が去ったのであれば尚更です。
とはいえ、マドリーというのは忙しく、政治的で、難解な特殊なクラブでして、
そこにいる選手たちの昨年の様子をお伝えし、今季の展望を書くことは、
マドリーという一大人間ドラマを楽しむ上では、意義があることなのではないかと信じ、
今季も主要人物たちを私なりに紹介しようと思います。
メンバーは個人的に私が重要だと思った人間に絞らせていただきました。
それでは、どうぞ。
1 ティボ・クルトワ
去年はキャリアハイの出来でスーパーセーブを連発。
サモラ賞(最優秀GK賞=最小失点)こそ逃したが、ジダン嫌いの有名コラムニストは、「クルトワが8つの手でタコのように止めまくるからこのチームは勝てる」と評するほどの存在感だった。
今季は攻撃重視のチーム設計の影響を受けそうで、さらに忙しくなりそうだ。
先日、契約を2026年まで長期延長したことからも、チームの絶大な評価が伝わる。
13. アンドレイ・ルニン
プレシーズンは好調で存在感をアピールしたが、キャリアハイ状態のクルトワの存在により出番のないかわいそうな存在。
ポジション奪取は絶望的で、我慢の時間が続く。
2. ダニ・カルバハル
万全なら世界最高の右サイドバックだが、昨季は筋肉系の負傷で6度離脱。
ほぼシーズン全休となってしまい、ファンに人気の彼ですら2025年までの長期の契約延長に一部疑問の声が出たほど。
しかし、要所でのゴールなど、出場すればその破格の性能を見せつけているのも確か。
ルーカスと負担を分担しつつ、まずは健康体を維持したい。
3. エデル・ミリタオ
5000万ユーロの移籍金で獲得したにも関わらずジダンがベンチに置き続け、フロントはフラストレーションを貯める日々だったが、ラモスとヴァランの離脱でチャンスを得ると、リバプールを完封。
値札相応の価値を見せつけ、セレソンにも定着した。
長らく彼の前に立ちふさがっていたラモスとヴァランが去り、今季はディフェンスリーダーとしての飛躍が期待される。
4. ダビド・アラバ
バイエルンとの契約を満了しフリーで加入。
背番号が背番号だけに入団会見ではラモスのことばかり問われ、本人も少々困惑していた。
久々の新戦力、高年俸ということもあり期待は高かったが、すんなりとファンの人気をゲット。
入団間もないながらも、スペイン語でSNSに投稿する姿勢もファンに愛されている。
しばらくバイエルンでは封印気味だった左サイドバックの起用も増えそうだが、本人のセンターでの起用の希望も知ってか、カルロは「センターバックの起用のほうが好き」と本心かどうかよくわからないコメントで気遣った。
5. ヘスス・バジェホ
東京五輪では慣れない右サイドバックで起用された結果、元バルセロナのマルコムにスピードで負け、敗退のきっかけになってしまった。グラナダにレンタル中だったが、ラモス、ヴァランの放出のため数合わせで復帰。
6. ナチョ・フェルナンデス
長い控え生活が実り、今季ははじめて完全なレギュラー格としてシーズンをスタート。
破格のユーテリティ性能も強力だが、そもそもセンターバックの少ない今季は本職での起用がほとんどになりそうだ。
「ディフェンスには楽天的な人間と悲観的な人間がいる。ナチョは後者。常に悪いことが起こると思っているから、集中を切らさずに対処できるんだ。」と独特の表現でカルロは彼を讃えた。
12. マルセロ
まず冒頭に断っておきたいが、マルセロはリビングレジェンドだ。それは変わらない。
しかし、自身のパフォーマンス低下に加え、ジダンの守備的戦術もマイナスに作用し、第2次政権ではほとんど出番がなかった。
サイドバックとしてはもうトップゲームでは厳しいかもしれないが、持ち前のテクニックは健在だけに、中盤起用等で活路を見出したい。
ラモスが退団したため今季は1904年以来のマドリー外国人キャプテン。契約最終年に挑む。
17. ルーカス・バスケス
昨季までは、「ジダンの評価は高いがクラブの評価は低い」選手だったが、
カルバハルの離脱でサイドバックのポジションを得ると突如覚醒。カルバハルには及ばないがそれでも世界トップクラスの働きを見せつけ、怪我多きジダン最終年を支えた。
ラモスや彼が一向に契約延長されないことを嘆き「サポートの欠如」と恩師は去ったが、無事に長期契約延長をゲット。
23. フェルラン・メンディ
ジダン第2次政権を支えた屈強なサイドバック。フィジカルの強さは脅威的で、対人は負けることがなくディフェンシブなジダンの好みに応えた。
しかし2年の過労によりシンスプリントを発症。オーバーユースが原因で起こることがほとんど(陸上系に多く、サッカー選手の発症は稀)の負傷は、アップダウンを繰り返す彼の肉体的に過酷な労働環境を物語る。
練習を再開してはいるが、すっかりと細くなった脚はファンを心配させている。
サイドバックに攻撃性能の高いプレイヤーを好むカルロは彼をセンターバックにコンバートする構想もあると言われる。
35. ミゲル・グティエレス
レアル・マドリーが積極的にプロモートする左サイドバックの若手。
昨季ジダンが見出し、カルロは3節のレバンテ戦で早くもスタメン起用。高い期待が伺える。
すでに実力はカンテラのいち若手のそれではなく完全にトップチームレベルだが、アラバのマルチな性能上事実上ナチョ、ミリタオとの競争になってしまうのが不運といえば不運。
とはいえ能力に疑いはないだけに、メンディ離脱中にアピールしたい。
8. トニ・クロース
昨季はキャリア最高の出来で中盤を支配。しかしジダンの酷使が祟り、グロインの問題を発症。
復帰にはもうしばらくかかりそうだ。
酷使後に迎えたEUROでは明らかに流しており、ドイツ代表ファンから不評を買った。
新たにクロース・アカデミーというアプリをリリースし、あなたの個人コーチになりますよ、と、サッカーファンと女性ファンを誘惑している。
10. ルカ・モドリッチ
昨季は久々のフル稼働。極度に薄い中盤で倒れることが許されない中、怪我がちのフェデからポジションを奪い返した。
今季は相棒のクロースが10月まで離脱で、少なくともそれまでは中盤は彼が仕切ることに。
9月の代表は軽い故障とはいえ、クロアチア協会の招集を振り切り辞退。
これまでクラブも代表にも全力を貫いてきた彼も、心境の変化があるのか。
36歳になったばかりのレジェンドだが、今年も走り抜けたい。
11. マルコ・アセンシオ
東京五輪で日本中に悪夢を見せた男だが、あのシーンはここ最近彼の一番の見せ場だったと言っても過言ではないほど低迷中。
かつてはクリスティアーノの後継者的位置づけだったが、価値は暴落。
"ausencia" (不在)という単語とかけたAusensioという蔑称が、スペインのトレンドワードに並ぶ日も多かった。
ジダンは彼を4-3-3のウイングとして頑なに起用していたが、カルロは彼をインテリオールとしてテスト中。今季はラストチャンス。
14. カルロス・エンリケ・カゼミロ
マドリーが誇る中盤3重鎮のひとり。
昨季はジダンが彼を攻撃時に上げる珍妙な戦術を採用したこともあり得点が増加。事実、リーガ6ゴールはベンゼマに次ぐチーム2位だ。コロナウイルスによる離脱以外は倒れず、チームを引っ張った。
カルロの新チームではかつてよりもプレスがかからないため、ボールの取りどころに今の所苦慮している感があるが、前掛かりなチームゆえのカバー範囲を改めてアピールしたい。先日、契約も2025年まで延長した。
自身のアプリで女性を誘惑はしない良きパパ。
15. フェデ・バルベルデ
好調時は既にモドリッチをベンチに押しやる実力者だが、昨季は多くのチームメイト同様怪我に苦しめられた。
11月にはすねの骨を骨折、1月には筋肉系離脱でまるまる2ヶ月離脱、チェルシーとの1st Legはコロナウイルスにより出場が叶わなかった。しかしリバプールとの2nd Legでは直前で負った腫れた足首を痛み止めを打ち強行出場。慣れぬ右サイドバックをこなした。
今年はモドリッチ、カゼミロ、クロースの3連覇中盤トリオから完全にレギュラー奪取を目指したい。契約も2027年まで延長。
19. ダニ・セバージョス
ジダンは獲得前から彼の加入には反対であり、その実ほとんど使われず関係が破綻。ロンドンで2年を過ごした。
とはいえ本人は条件の良かったバルセロナを蹴ってマドリー入団するマドリディスタであり、憎きジダンがいなくなった今季は残留を強く希望。マドリーは彼をかなり換金していたがっていたが残留になった。
東京五輪で負った足首の怪我でしばらくは欠場。カマヴィンガの加入がどう出るか。
22. イスコ
かつてのティーンのアイドルも、シーズンを追うごとにモチベーションが低下し、それと反比例するかのように腹回りのウエイトが増えていった。
しかし契約最終年で気合が入っているのか、今季はシェイプアップに成功。2節のベティス戦ではここ数年でベストといえるほどにキレを取り戻していた。
高額年俸ゆえに契約延長の可能性は高くはないが、クロースが不在のうちにどの程度アピールできるかでシーズンが左右されそうだ。
25. エドゥアルド・カマヴィンガ
移籍期限直前に加入した18歳の若きフランス人。マドリーは長らく彼を狙っていたが、エンバペの獲得交渉が停滞すると、思い出したかのように突然獲得した。
入団会見では「お金は重要ではなく、マドリー加入は夢だった」と無邪気な笑顔で喜び、ファンが喜んだ。
ベテラン揃いの中盤だけに、若さやエネルギーでアピールしたい。
7. エデン・アザール
昨季一番話題になったのはピッチ上よりも、スタンフォード・ブリッジでの敗退後無邪気に談笑する彼の笑顔がマドリディスタとメディアを逆なでしたことだった。
「マドリーは僕に大金を払ったので恩返しをしたい」と語るが、クリスティアーノやラモスといったプロフェッショナリズムの塊のような存在に慣れきったファンからは、彼の姿勢を問う意見が続く。とはいえ復調の気配も。
9. カリム・ベンゼマ
昨季はリーグ戦23ゴール、年間でも30ゴールをクリア。
前線での唯一の絶対的戦力にふさわしい安定した出来で、ほぼ常に好調をキープした。
EURO直前に、自身の黒歴史から追放されていた念願のフランス代表にも復帰。
4試合4ゴールと存在感を見せた。
SNSではハイブランドを着こなす様とトレーニングを公開しており、Nueve(9)と文を締めるのが定番。
ラッパーのPV的なライフスタイルを地で行き、大人になりきらない彼は一部のファンを熱狂的に楽しませている。
16. ルカ・ヨビッチ
もともとはベンゼマの控え兼将来的な後釜として6000万ユーロで加入したフォワードだが、シャイな性格も相まってチームに馴染めず。昨季は半年間フランクフルトにレンタルバックした。
2列目の存在の多さから2トップ起用はまず望めず、出場にはベンゼマを超えるしかなさそうだ。
18. ギャレス・ベイル
3連覇中に2度CLの決勝のスタメンから外れ、中国行きが目前に迫った際は「(ベイルが)早く出たほうがより良い」と発言していたジダンを本人が嫌うのも無理もない気がするが、第2次政権では関係が破綻。
年間総額3400万ユーロもする維持コストの高さもパンデミック下では逆風で、昨季はスパーズにレンタル。終盤には活躍した。
監督が曲がりなりにも起用を続けていてくれたカルロへと変わり、モチベーションを取り戻したひとり。契約最終年に挑む。背番号が今季からは18。
20. ヴィニシウス・ジュニオール
「決定力以外はすごい」という評判が定着している中、今季は開幕2試合で3ゴール。
「4度も5度もフィニッシュの際にタッチしてはだめだ。1度、せいぜい2度」というカルロの指導の効果なのだろうか。
決定力のあるヴィニシウスはペレなのでは?と現地ファンは冗談っぽく喜んだ。
毎シーズン、年齢の割には酷な批判を受け続けてきたが、それでも腐らず、
大事な局面でポスト・クリスティアーノ期のチームを救っている。
今季は復調の気配のあるアザールとの勝負が待っている。
21. ロドリゴ
フィニッシュワークが売りで、ビッグマッチの強さもあるが、なかなか継続的に力を発揮することが出来ていない。本職の左ウイングに加え右ウイングもこなせる器用さも、ややマイナスに作用している印象。
リーガ6アシストは決して悪くない数字だが、より得点で目立ちたいところ。
カルロからの評価は高く、キャンプ序盤では彼を非常に気に入っていると報じられた。
24. マリアーノ・ディアス
リヨンでの爆発後マドリーに復帰するも、坐骨神経痛やグロインの問題などに難しい負傷に苦しみ、ベストフォームに戻らない時期が続いている。
頑なに移籍を拒むことで知られ、最終日もラージョとのクラブ間合意が報じられたが拒否。
ファンの怒りを買っている。
監督 カルロ・アンチェロッティ
BBC全盛の前回の就任とは異なり、今回は明らかに転換期の就任。
いつもどおりメガスターのエゴに対処しながらチームを作ることに加え、ジダン第2次政権であまり進まなかった時計の針を進めるという難しいミッションが課せられた。
自身の希望通りベイルが残留。
まずは彼を筆頭に、ジダン政権下でモチベーションを失った選手を蘇生させることがミッションになりそうだ。
会長 フロレンティーノ・ペレス
欧州スーパーリーグに続き、エンバペ獲得失敗と、黒歴史を更新し続ける暴走系74歳男性。
ESLはサッカー界を救うとうそぶき、すっかりとヴィラン(悪者)のイメージのついた悪代官を地で行く会長だ。
パンデミックでも黒字経営を維持、自身の悲願であるベルナベウリニューアルは達成したが、こけら落としに目玉スターを連れてくることは出来なかった。
ルイス・フィーゴから20年。5年で4度のCLの後は、サッカー界の覇権はアラブ・マネーに奪われた。
得意のメディアコントロールによる支配も新たな限界を露呈している感も。
もう一度、サッカー界になにかを起こせるか。