マドリー、アクションを待つ、、そして睨み合いへ
こうした状況的には有利に見えるレアル・マドリーですが、ある意味パリと共通している点があります。
はっきり言ってレアル・マドリーも、エンバペのことを信じていません。
特に昨年、期待をさせながら直前で裏切られたという思いがあるからです。
レアル・マドリーにとって理想のシナリオは、エンバペがマドリーへの移籍希望を発信することです。
これまで彼の、「マドリーは夢」としつつ、実際の移籍となると何を聞かれてものらりくらりの態度が、この状態を生んだという意識があります。
レアル・マドリーは現時点で、この問題はパリとエンバペ間のメロドラマだと考えており、
自身は当事者ではないというスタンスがあります。
エンバペがレアル・マドリーへの移籍希望をすることではじめて、マドリーは当事者になるというのがマドリーの考えで、エンバペ側からなんらかの媒体や会見で公言することを希望しています。
とはいっても、マドリーはエンバペのキャラクターを理解しているので、実際には彼が希望を公にしようがしまいが、夏の最後にはいずれにせよ市場に出て行かなければならないとも理解しています。
エンバペ側が、自身の希望をより明確に表明したインタビューや記事のようなものを撮影/記録し準備しているという噂もありますが、それが存在するかも、実際に公開されるかもわかりません。
結局、パリ、レアル・マドリー、エンバペの3者の中で、1番強い立場なのはエンバペです。
1年干す、という脅しは契約延長を迫る単なるプレッシャーでしかなく、エンバペ陣営はそれを理解しています。
実際に1年干したとしても、その間パリはエンバペに給料を支払う必要があり、何の得もありません。
マドリーは今夏欲しいのであれば、いずれは交渉に出ていかなければなりません。強者であり続けるには、今夏は来なくてもOKとしなければなりませんが、マドリーは実際には今夏欲しがっています。
だからエンバペからしたら、どうしても今季に移籍したい、交渉をスピードアップさせたいという目的がなければ、このまま移籍希望も言わないほうが得でしょう。
エンバペとしては、移籍希望を公にするより、態度をあいまいにして双方の可能性を残しておいたほうが、両クラブから好条件を引き出せます。
というのも、エンバペとしては、移籍希望を公にしなくても、レアル・マドリーがいずれ仕掛けてくることはわかっているわけです。
何もしなければマドリーが今夏パリにオファーを出さない、というのは想定していないでしょう。
この交渉は、エンバペだけでなく、パリ、レアル・マドリーの3者とも、先に動いたほうが不利になるのです。
パリはレアル・マドリーと交渉を開いてしまえば、マドリーに足元を見られることになります。
レアル・マドリーが先にアプローチをかければ、その逆が起こり、パリの言い値で買わされる可能性が高いでしょう。
もちろんそこでパリの要求額は出せないと来夏まで待つという選択肢はありますが、エンバペは気まぐれです。取れるときに取っておきたいという思いはあるでしょう。
だから、睨み合いが続いているのです。
これがこの泥試合の理由です。
誰かがカードを切るのを、3者とも待っているのです。
移籍が成立するかは、誰が今後どのようにカードを切っていくか、そしてその結果、パリとエンバペの関係が夏の終わりにどうなっているか次第だと思います。
市場が閉じる今年の夏の終わりに、パリがどれだけエンバペにイラついているか、どの程度関係が壊れているか、あるいは修復されているか。
カードが切られないまま、このまま夏以降もリスク覚悟の契約延長交渉続投の可能性もあるでしょう。
そして最終的に、3者の着地点が見つかるかどうか次第、ということで、
あくまで現段階(8/10)時点ではありますが、私の見解としたいと思います。