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23-24 レアル・マドリー選手名鑑

みなさんこんにちは。

普段はnoteでマドリーのことを書いています。

この間はエンバペの記事を読んでくださってありがとうございました。

ここ数年メンツがさして代わり映えしなかったマドリーですが、今年は09年から所属していたベンゼマが移籍しました。

そして、久々の銀河系戦士(もうこのワードを知らない世代もいるのでは)ベリンガムが来ました。

レアル・マドリーは政治的で特殊なクラブなのは、ここで毎年書いている通りなのですが、

今年はそれに加え、ベンゼマという近年のマドリーの成功を支えた存在がいなくなり、

どことなくチームがドタバタした雰囲気があります。

過去数年で最も計算の立たないシーズンと言ってもいいでしょう。

クルトワ、ミリタオが前十字靭帯断裂により離脱したので、それに拍車がかかっています。

そして、夏には例によって長年の恋人エンバペ一本釣りを狙い…

結果はご承知のとおりです。

いつになったら彼の名前をここに書けるんでしょうか。

そんなこんなで、激動のシーズンになる予感がするので、シーズンを戦うメンバーを、それぞれの近況とともに紹介したいと思います。

1 ティボ・クルトワ

昨季も相変わらずの充実ぶりで、キャリアの絶頂期を謳歌していたが、

練習中に左膝の前十字靭帯を断裂。一転して地獄に叩き落されてしまった。

復帰の見通しは立たないが、既に練習を再開している。

CLの進捗にもよるが、基本的には本格復帰は来季。

13. アンドレイ・ルニン

昨季はクラブW杯などでピッチに立ったが、ドタバタした印象を払拭することが出来ず、

クルトワの負傷後も信頼を寄せられず、ケパとポジションを争う。

とはいえ、ノーチャンスのクルトワ相手と比べればケパ相手ならばチャンスはある。

192cmと体躯面での有利さを活かしたい。

25. ケパ・アリサバラガ

クルトワの負傷に伴い、急遽補強したGK。

マドリーのトップターゲットは元セビージャのヤシン・ボノだったが、移籍金(2000万ユーロ)がかかること、

そしてモロッコ代表でアフリカネーションズカップで離脱することがネックとなり、無料レンタルを受け入れてくれたチェルシーとの移籍がまとまった。

ケパ自身もバイエルンへのレンタルが決まりかけていたところを、それを直前で蹴ってやってきた。

かつてジダンにマドリー移籍を拒否された有名な過去があり、

本人は完全移籍へ意欲をのぞかせるが、開幕数戦のパフォーマンスはクルトワとは比べるべくもなく、まずは定位置定着が先か。

2. ダニ・カルバハル

昨季は久々に大きな怪我なくほぼシーズンを終えることが出来た。

ネーションズリーグ決勝ではパネンカを決め、強心臓ぶりを見せた。

ビッグマッチでの守備の安定感も健在。

立場は安泰だが、徐々に後継者の話題が出てきているのも確か。

シーズン序盤の好調を維持できるか。

3. エデル・ミリタオ

昨季はリーグ優勝が途絶えてからは気の抜けたプレーもあったが、大車輪の活躍でDFリーダーとして君臨。

5ゴールと攻撃面でも貢献した。

アラウホと並びリーガ最高のセンターバックのひとり。

今季は開幕早々に前十字靭帯を断裂し、クルトワとともにリタイア。

復帰の目処は立たず。

4. ダビド・アラバ

昨季は故障がちでパフォーマンスが安定せず、本来のコンディションに戻ったのはコパ・クラシコ前後の最終盤。

加入1年目のように、ラモスの後継者として安定したパフォーマンスは見せることが出来なかった。

ユーティリティプレイヤーのイメージが強いが、現在は時折サイドバックをチーム事情でやむなくこなす程度で、ほぼ専業のセンターバック。

本人もサイドバックのプレーを拒み、センターバックで戦うことを強く希望している。

今季はFKを任されることも増えそう。

6. ナチョ・フェルナンデス

昨季はアンフィールドで左サイドバックとしてサラーを完封しクロップに称賛されたが、その後はカマヴィンガに上回られてしまった。

彼のあふれるクラブ愛もとうとう限界が近かったのか、契約満了に伴い一時はインテル移籍が目前に迫ったが、ベンゼマ退団で第1キャプテンとなることもあり契約を1年延長。

とはいうものの、彼の想いも虚しく、序列は低く開幕数試合の出番は限定的。

ミリタオ負傷で出番は昨季よりは増えるはずなので、そこでアピールするしかない。

17. ルーカス・バスケス

基本的にはどのクラブでもレギュラーとしてプレーできる実力の持ち主だが、

ナチョとともにクラブ愛を貫き、貴重なバックアッパーとして稼働率が落ちてきたカルバハルをサポートする。

面倒見がよく、ベリンガムともすぐ打ち解けた。

20. フラン・ガルシア

レアル・マドリーの左サイドバックはかつてロベルト・カルロスやマルセロ、

すなわち破天荒な攻撃性の陽気なブラジル人のものだったが、それにチャレンジするのがカンテラ出身のフラン・ガルシアだ。

元カンテラーノはラージョで名を上げて今季帰還。

地味だが真面目で若く運動量が多く、メンディ、ナチョとの競争を数歩リードする。

22. アントニオ・リュディガー

入団1年目の昨季は原則的にはミリタオ、アラバの牙城を崩すことが出来ず、出場は主に両名の不在時に限られたが、CL準決勝1st Legでハーランドを完封し、ハードマーカーとしての実力を示した。

ミリタオが長期離脱し、今年は完全にレギュラー格に。真価が問われる。

マドリーは彼がチームメイトとじゃれる動画をよく公開しており、陽気なキャラクターが愛されている。

23. フェルラン・メンディ

昨年は年明け以後は怪我でほぼ全休。

レアル・マドリーはこの夏に彼を売りたがっていたが、夏もまた怪我で売れず。

カルロは彼を貴重な戦力として評価しているが、クラブはほぼ売ることにしか興味がない。

守備の強さで再びアピールできるか。

今季は場合によってはセンターバックを務める可能性も。

5. ジュード・ベリンガム

英国型のBox2Boxと近代的な中盤での万能性を併せ持つ。

開幕4試合で5ゴールとほぼ1人でチームを勝利に導き、すでにマドリディスタは彼の虜。

ベルナベウではHey Judeが早くも歌われている。

マドリーにとって背番号5はジダンの番号で、マドリーは新たな物語を求めているが、

既に彼には限界がないのかとファンに夢を見させている。

外れない膝のサポーターが唯一、やや気掛かり。

8. トニ・クロース

昨季は徐々にコンディションを取り戻し、長らく噂された引退も撤回。

多くの選手がコンディション不良だったCLシティ戦2nd Legでも、クルトワとともに気を吐いた。

しかし、クラブの「チュアメニ-バルベルデ-カマヴィンガ-ベリンガム」のダイヤモンドの中盤を起用するという方針により、開幕はベンチからのスタート。

しかし4節のヘタフェ戦では、後半から投入されると自慢のパスワークで格の違いを見せつけた。

ガブリ・ベイガのサウジ移籍に踏み込んだ発言をし、ピッチ外でも健在ぶりを示した。

10. ルカ・モドリッチ

38歳となり、チームの若返り方針もあり開幕3試合はベンチスタート。

「モドリッチがベンチなのは、私にとっても特別なこと」とカルロは正直に語る。

オフにはサウジ移籍が取り沙汰されたものの、巨額オファーを蹴り残留。

すでにお別れビデオも準備済みだったと言われるほど放出を覚悟していたマドリーを驚かせた。

クラブは執拗に世代交代を迫るが、それを跳ね除けて

2013年から終わらないマドリーの中盤での彼の王座を続けることはできるか。

ファンの人気は絶大。

12. エドゥアルド・カマヴィンガ

チームのムードメーカーであり、皆に愛される弟分。

デシャンの発明で昨季は左サイドバックという新境地を切り開いたが、本人は「好きじゃない」と公に何度も発言しており、今季は原則として中盤。

タイプは違うがチュアメニと適正ポジションが近く、彼との共存では彼が割を食いがち。

マデスという豆の煮込み料理が好きで、一緒に米も食べる。そのため極東の某米騒動とは無縁。

15. フェデ・バルベルデ

昨季はプライベートの問題(パートナーの流産の危機)からそれを挑発材料にした選手への問題行動(バエナへの暴行)を起こしてしまい、徐々に調子がトーンダウンしてしまった。

ウルグアイ代表では既にキャプテンマークを巻くようになり、「マドリーでいつかキャプテンマークを巻きたい」とも語る。

今季はチームが4-3-1-2のままなら、ウイングではなく本職の右インテリオールでの起用が増えそう。

ボールを持ったときの推進力が売り。

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18. オーレリアン・チュアメニ

カゼミロの後釜として期待された昨季はW杯までは良かったが、

シーズン後半はコンディションが落ち、ベンチ要員に。

カマヴィンガに勢いで完全に上回られた。

今季はプレシーズンから好調。代表でもミドルを決め、勢いがある。

プレースタイルはカゼミロというよりマケレレに近い。

19. ダニ・セバージョス

契約延長は微妙だったが、晴れて2027年まで契約延長。

強烈な中盤であくまで定位置を確保する姿勢を示した

…が、気持ちが空回りしたのか怪我で早々にリタイア。

現状ではモドリッチとクロースが控えの中、さらにその下という序列だが、

これまでのように、持ち前の技術とエネルギーで過密日程のチームを支えたい。

24. アルダ・ギュレル

神童、バルセロナが狙う存在、などいくつか要素が重なり、マドリーがほとんど衝動的に獲得した選手。

マドリーは当初レンタルで武者修行の予定だったが、本人が会見場で頑なにレンタル移籍を拒否したため、トップチーム残留となった。

まだ子供の顔立ちから、ファンには愛されているが、

半月板を痛めプレシーズンは全休。復帰は9月末の予定。

そのためファンであってもプレー集以外でのプレーを知らず、

チームの秘密兵器になるのか、ベンチのマスコットになるかは誰もわからない。

7. ヴィニシウス・ジュニオール

ベンゼマ退団で押しも押されぬエース級に。局面打開力は別次元のレベルにあり、単独で相手を破壊することができる。

昨季は人種差別騒動などで周囲は騒がしかったが、CLで7 ゴールときっちりと結果を残した。

今季は本来の左ウイングではなくセンターフォワードの左を任されやや苦労気味のスタート。

背番号は今季から7。

マドリー栄光の背番号に近年ついたいくつかのシミを取ることができるか。

11. ロドリゴ・ゴエス

フロレンティーノが「ヴィニシウスの次」と期待する華やかなタレント。

去年は右だけでなくベンゼマ不在時のセンターフォワードでの起用も多かったが、

CLの重要なゲームで貴重なゴールを連発した昨季と比べるとややトーンダウン。

本職はヴィニと同じ左ウイングなので、彼とは別のポジションで輝きを放つ必要があるが、

右、中央ともにまだ覚醒には至っていない。

シュート技術はヴィニを凌駕するが、最近ややふかしがち。

14. ホセル・マト

当初は「契約の切れたマリアーノの代わり」すなわち第3フォワード級の扱いとして、

エスパニョールが降格するとすぐさま格安レンタルで獲得した33歳のセンターフォワード。

しかし、予期せぬベンゼマの退団と、エンバペのごたごたで、

結局はチーム唯一のセンターフォワードに。

ヴィニシウス負傷後のヘタフェ戦でスタメンのチャンスを得ると、早速ゴールで応え、代表でも得点した。

過小評価されがちだが、昨季は19位のエスパニョールでリーグ16ゴールは、レバンドフスキ、ベンゼマに次ぐ数字。

影の実力者としてキャリア終盤に大きな花を咲かせることができるか。

21. ブラヒム・ディアス

レンタルされていたミランから2年半ぶりに帰還。

当初は完全なる構想外扱いだったが、契約延長を見込んでいたアセンシオが予想外に退団したため、とりあえずバックアップとして復帰させた。

マドリーからの期待値は低く、夏にミランに再レンタルするのでは、といった話もあったが、

前線の駒数は少なく、チャンスはかつてのジダン政権よりはありそう。

監督 カルロ・アンチェロッティ

昨季は主要タイトルはコパ・デル・レイのみ。

それでもCLベスト4という一定の成績もあり、リーガかCLを取らないとクビ、というレアル・マドリーの不文律を回避。

もちろん2度のCLという実績もこの例外措置に影響している。

「使って欲しい選手を使って勝ってくれる」とフロレンティーノの評価は高く、ファンからも人気だが、今季はかつてなくスカッドがいびつ。

得意の持ち駒で最大値を引き出す手腕に期待がかかる。

ブラジル代表にカタールW杯終了後から追われており、1年半彼らを待たせている。

2024年のマドリーとの現行契約終了後は仁義からセレソン就任が有力。

会長 フロレンティーノ・ペレス

エンパペの尻を執拗に追い続ける、執着系76歳スペイン人男性。

卓越した経営手腕を持つ一方で、その盲目的執着の結果、ファンは補強をお預けにされ不満を貯める結果に。ベリンガムを獲得したにも関わらず、失敗の夏の印象が強い。

新スタジアムは12月に完全リニューアル予定だが、そのこけら落としの顔としたかったエンバペは間に合いそうにない。

ポスト・ベルナベウ改修後の世界をそろそろファンに示したいところ。

【初心者向け】今年のエンバペのあーだこーだについて解説します

みなさんこんにちは。

ssfm1902です。


2度あることは3度ある、と言いますが、3度目の正直、という言葉もあります。

なぜほぼ反対の意味のことわざがあるのでしょうか。日本語は不思議です。

さて、エンバペの移籍話と言えば、2度や3度どころの話ではなく、もはや夏の季語と言っても過言ではありません。

なのですが、毎年微妙に事情が違うので、「エンバペは移籍しそうですか?」とよくお声がけいただきます。

なので、現在の状況をなるべくわかりやすく説明しようと思います。

移籍話を含めマドリーの最新情報はnoteで書いているので、

これを読んで、今後のことを知りたい!と思ってくださった方は、ググってください(宣伝)

これから書くことはほとんどそこで書いたことばかりで、そのまとめになります。

これまでの(ざっくりとした)あらすじ

昨年の5月、エンバペは大方の予想に反し、パリとの契約を延長しました。

2024年までの2年契約+1年の延長オプション付きのものです。

通常25歳以下のトッププレイヤーの契約において、2年というのは非常に短いです。

PSG(以下パリ)側もエンバペの将来的移籍願望は認識しており、こうなったものと思われます。

レアル・マドリーはこれを受け、エンバペが獲得可能になるのは(早くても)2024年、という認識で補強戦略を考え、今夏はジュード・ベリンガムを銀河系選手として獲得しました。

では、なぜ今騒いでいるのか

2ヶ月前の6月12日、エンバペがパリに書簡を送付したことがメディアによって報じられます。

その内容は、先述の+1年の契約延長オプションを、エンバペ側が行使する意思がないというものでした。


契約延長する気はないが、今夏はパリ残留を希望し、2024年まではパリの選手としてプレーしたいということです。

これはどういうことか。

このままだと2024年にエンバペとパリの契約が切れ、パリは一銭も得ることなく、エンバペを失うリスクがあるということです。

エンバペ側の背景

本人、両親、弁護士で構成されるエンバペ側がこのタイミングでこの書簡をメディアに漏らす決断をしたのは、ベンゼマのサウジアラビア移籍が影響していると言われています。

レアル・マドリーの攻撃陣は、ベンゼマ-ヴィニシウスは固まっており、確定していないポジションは、エンバペがキャリア初期にのみこなしていた右のフォワードのみであり、移籍をしても彼の得意なポジションがなく、工夫が必要でした。


レアル・マドリーは当初、現状のバロンドールであるベンゼマを2024年まで攻撃の軸として考えており、その後エンバペの獲得による世代交代を目論んでいました。

しかし、ベンゼマが昨季最終節の1日前に、内定していたマドリーとの契約延長を蹴って急遽サウジ行きを決断し、電撃退団しました。


レアル・マドリーのセンターフォワードがいなくなり、ベンゼマの後釜としてすんなりとエンバペが収まる(彼が本来はセカンドストライカーであるという事情は無視すれば)ことが、彼の「クーデター」の背景にあるでしょう。


論点:タイムリミット


サッカーの世界では、残り契約が半年になった時点で、選手は自由に他チームと次の契約することが可能になります。

今回のケースでは、エンバペがこのままパリと契約延長をしないままだと、2024年1月1日より、マドリーはパリを介さずに自由にエンバペと交渉が許可されます。

つまり、今のままだと、レアル・マドリーは2024年7月にエンバペを無料で手に入れることが(理論上)可能になるのです

そのため、パリとすれば移籍金が発生する今夏のうちにエンバペを売却すべきかどうか、という話なのです。


レアル・マドリーにとって時間は有利です。

何しろエンバペが抵抗している限り、待っていれば年明けに移籍金なしでエンバペ獲得が出来ます。

ですから、これを理由に、今夏移籍金を払うにしても、強気の姿勢を取ることが出来ます。

もっとも、ご存知のように、2022年1月も同じ状況でしたが、土壇場で契約に失敗しました。

肝心の最後のサインがないまま、締結されたマドリーとエンバペの仮契約は放置され、最後の最後にパリはエンバペと契約延長をしたのです。

この予想外の展開は、フランス大統領マクロンの言葉がエンバペに影響した(実際に直々に話し合いがあったのは事実のようです)とか、2024年のパリオリンピックとの兼ね合いがどうたらとか、がメディアでは言われましたが、本当のところは分かりません。


エンバペ側の強硬姿勢と態度の悪化

今夏の騒動をややこしくしているのは、エンバペの一方的な態度です。

契約延長をしない、とパリに一方的に突きつけ、その一方で今夏の残留を希望しています。

その後パリとの会話に一切応じようとしません。

つまりパリは事実上、2024年の契約終了を待つことしかできません。

さらに7月9日、France Footballによるエンバペの独占インタビュー(書簡を送る前に収録されたそうです)が公開され、自身のこれまでの活躍を人々が当たり前にとらえているのでは、という文脈において、

「(長年パリでプレーし、あまりにパリの人々に近すぎる存在なので)パリでプレーすることは助けにならない」と答えるなど、自クラブへのリスペクトを欠いた言動を見せています。

これに対しパリは、「クラブより大きな存在はいない」とアル・ケライフィ会長が、明らかにエンバペを指しつつ発言するなど、パリ=エンバペ間の関係がこれまでになく悪化しています。

直近では、フランスリーグが実施する1度目の写真撮影にも応じませんでした。

(もっとも、市場終了後にも2度目のセッションがあり、その際に参加することも出来ます)

パリの怒り


こうしたエンバペのスタンスを受け、パリは「契約延長か今夏の放出」という姿勢を取り、7月の間、1年の契約延長オプションを行使するようにエンバペに迫り、圧をかけました。

焦点となっているエンバペの現行契約の延長オプションは、行使の場合7月いっぱいが有効期限と契約で定められていました。

7月上旬、アル・ケライフィ会長はルイス・エンリケ新監督就任の発表の際、このことに言及し、

エンバペ側に、遅くとも2週間のうちにクラブに連絡をするよう発言しましたが、エンバペ側から応答はありませんでした。

このため、22日、パリはアジア遠征のメンバーを発表しましたが、ご存知のように、パリは日本・韓国でのアジアツアーにエンバペを帯同させませんでした。

その間、エンバペはパリのPSGキャンパス(練習施設)にて、ワイナルドゥム、ドラクスラーら、パリが戦力外とみなす選手たちと、主力メンバーから隔離され練習を強いられました。この状況は現在も続いています。


8月になってもエンバペ側から応答はなく、契約延長の意思がないとしたパリは、エンバペを市場に出すことにします。

まもなく、パリはサウジアラビアのアル・アハリと、エンバペの移籍で3億ユーロの移籍金で合意し、アル・アハリとエンバペ間の交渉を許可します。

これはクラブ間のみで行われた交渉で、エンバペはアル・アハリとの交渉を拒否し、破談となりました。

同時に8月に入り、パリは来年に希望するクラブへの放出を確約するオプションを付与した上で、エンバペに新たな契約をオファーしましたが、エンバペはこれを直ちに断りました。


相変わらず、エンバペはひとまず現行契約のまま2024年までパリでプレーして、その後は自由に将来を決める、というスタンスを崩しません。

パリは、エンバペとレアル・マドリーとの間に、2024年に入団することで合意する密約があると疑い、契約延長に応じない限り、23-24シーズンを通じて、エンバペを干すことを仄めかしています。

実際に、パリは現在、エンバペなしでチーム作りを進めています。

ベンフィカからセンターフォワードであるゴンサロ・ラモスの獲得が発表され、さらにマルチなフォワードであるフランクフルトのコロムアニ(本人が退団をフランクフルト首脳陣に希望)の獲得にも動いています。

ポジションは違いますが、バルセロナからデンベレ(書類の送付をバルセロナが遅らせており、移籍が遅れている)の獲得も迫っています。

マドリー、アクションを待つ、、そして睨み合いへ

こうした状況的には有利に見えるレアル・マドリーですが、ある意味パリと共通している点があります。

はっきり言ってレアル・マドリーも、エンバペのことを信じていません。

特に昨年、期待をさせながら直前で裏切られたという思いがあるからです。

レアル・マドリーにとって理想のシナリオは、エンバペがマドリーへの移籍希望を発信することです。

これまで彼の、「マドリーは夢」としつつ、実際の移籍となると何を聞かれてものらりくらりの態度が、この状態を生んだという意識があります。


レアル・マドリーは現時点で、この問題はパリとエンバペ間のメロドラマだと考えており、

自身は当事者ではないというスタンスがあります。

エンバペがレアル・マドリーへの移籍希望をすることではじめて、マドリーは当事者になるというのがマドリーの考えで、エンバペ側からなんらかの媒体や会見で公言することを希望しています。

とはいっても、マドリーはエンバペのキャラクターを理解しているので、実際には彼が希望を公にしようがしまいが、夏の最後にはいずれにせよ市場に出て行かなければならないとも理解しています。

エンバペ側が、自身の希望をより明確に表明したインタビューや記事のようなものを撮影/記録し準備しているという噂もありますが、それが存在するかも、実際に公開されるかもわかりません。

結局、パリ、レアル・マドリー、エンバペの3者の中で、1番強い立場なのはエンバペです。

1年干す、という脅しは契約延長を迫る単なるプレッシャーでしかなく、エンバペ陣営はそれを理解しています。

実際に1年干したとしても、その間パリはエンバペに給料を支払う必要があり、何の得もありません。

マドリーは今夏欲しいのであれば、いずれは交渉に出ていかなければなりません。強者であり続けるには、今夏は来なくてもOKとしなければなりませんが、マドリーは実際には今夏欲しがっています。

だからエンバペからしたら、どうしても今季に移籍したい、交渉をスピードアップさせたいという目的がなければ、このまま移籍希望も言わないほうが得でしょう。

エンバペとしては、移籍希望を公にするより、態度をあいまいにして双方の可能性を残しておいたほうが、両クラブから好条件を引き出せます。

というのも、エンバペとしては、移籍希望を公にしなくても、レアル・マドリーがいずれ仕掛けてくることはわかっているわけです。

何もしなければマドリーが今夏パリにオファーを出さない、というのは想定していないでしょう。

この交渉は、エンバペだけでなく、パリ、レアル・マドリーの3者とも、先に動いたほうが不利になるのです。

パリはレアル・マドリーと交渉を開いてしまえば、マドリーに足元を見られることになります。

レアル・マドリーが先にアプローチをかければ、その逆が起こり、パリの言い値で買わされる可能性が高いでしょう。

もちろんそこでパリの要求額は出せないと来夏まで待つという選択肢はありますが、エンバペは気まぐれです。取れるときに取っておきたいという思いはあるでしょう。

だから、睨み合いが続いているのです。

これがこの泥試合の理由です。

誰かがカードを切るのを、3者とも待っているのです。

移籍が成立するかは、誰が今後どのようにカードを切っていくか、そしてその結果、パリとエンバペの関係が夏の終わりにどうなっているか次第だと思います。

市場が閉じる今年の夏の終わりに、パリがどれだけエンバペにイラついているか、どの程度関係が壊れているか、あるいは修復されているか。

カードが切られないまま、このまま夏以降もリスク覚悟の契約延長交渉続投の可能性もあるでしょう。

そして最終的に、3者の着地点が見つかるかどうか次第、ということで、

あくまで現段階(8/10)時点ではありますが、私の見解としたいと思います。

アルダ・ギュレル、決断が間近

MARCA。

今夏のセンセーションの一人であるアルダ・ギュレルは、現在移籍先を決めている最中。

直近では、その争いはマドリーとバルセロナに狭まり、決断が間近。

レアル・マドリーの将来的なプロジェクトか、バルセロナの約束するトップチームの即時合流か。

当初は、バルセロナが彼を獲得しようとしていたものの、直前でマドリーが動きを見せ、状況が一転。

決断は間近。