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【読み物】シャビ・アロンソにとって今回のクラシコが重要である理由

みなさんこんにちは。

普段はnoteにて、レアル・マドリーという特殊なチームの流れについて書いています。

こないだの日本 vs ブラジル戦では、朝起きたらカルロの表情に関するつぶやきが軽くバズってました。


今日はカルロではなく、今のチームの話をしようと思います。

シャビ(チャビ)・アロンソ政権は、数字だけ見れば、リーガ首位、CLも3戦全勝と、順風満帆どころか、これ以上ないスタートに見えます。

にもかかわらず、レアル・マドリーにとって今回のクラシコは、伝統のライバルとの直接対決以上の扱いです。

The Athleticの記事は、アロンソの現在の状態は、「試合が始まったばかりなのにイエローカードをもらいそうな選手みたいなもの」と表現していました。

大げさに言えば、生きるか死ぬかみたいな扱いです。

「単なる3ポイントではない試合」「真実の時」などとメディアで報じられています。

絶好調チームがクラシコでバルサ撃破へ!みたいな気楽なテンションではありません。

今回はそのあたりの背景を、普段マドリーを追っていない人、あるいは断片的に追っている人向けに、お伝えしようと思います。

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特殊な船出

アロンソ・マドリーは特殊な形で始まりました。

通例であれば、新監督は7月中旬から新たなチームを率い、プレシーズンを経て、リーグ戦、CLに臨みます。

しかしアロンソは6月中旬から始まるクラブW杯から指揮を取ることになりました。

カルロ・アンチェロッティ前監督が昨季のリーグ戦終了とともにブラジル代表に就任したため、6月末という、本来クラブシーンがオフの日々からいきなり指揮を取ることになりました。いわばぶっつけ本番です。

大会後に改めてオフを迎え、新たなシーズンに突入という流れになったのです。

アロンソは、4年のカルロ政権の色が濃く残るチームを引き継ぎ、当初はやや苦労したものの、徐々に自分の色をチームに染み込ませていきました。

しかしユベントス、ドルトムントを倒して迎えた準決勝、欧州王者のパリ・サンジェルマンに0-4の大敗を喫します。

とはいえ、経緯が経緯だけに「就任間もないから仕方がない」と、当時はこの敗戦は仕方がないものと受け入れられました。

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ダービーが落とした影

改めて迎えたシーズン、アロンソ・マドリーはしばらく快進撃を続けます。

開幕からリーガは6戦全勝。

チームにはハイプレス、ボールの即時奪回の習慣がつき、「守備へのコミットメント」を会見で繰り返す羽目になった昨季のカルロ政権とは全く異なる姿でした。

一方で、すべてが順風満帆だったわけではありません。

その間、アロンソは「実力主義」を導入、特に両ウイングを中心に積極的に試合ごとにメンバーを入れ替えたのですが、第2節のオビエド戦とCL第1戦のマルセイユ戦でスタメンを外れたヴィニシウスがSNSにあからさまに落ち込んだ様子を投稿したり、交代時に不満を見せ憤る、といった事件もありました。

特に、マドリーにとって特別な大会であるCL初戦のマルセイユ戦でスタメンを外れたことは、ヴィニシウスにとっては相当ショックだったようで、アロンソは「翌日は(落ち込んでいて)話しかけられなかった」と話すほどでした。

ちなみに、ビセンテ・デル・ボスケ(アロンソが選手時代、スペインがW杯優勝したときの監督)は「アロンソは会見で思ったことを話しすぎ。そんなに包み隠さず話さなくてもいい」と最近たしなめたのですが、このあたりの内情を結構アロンソが会見場で素直に話していたことが理由であると思われます。

ロドリゴ、ブラヒムといった控え選手たちがこうした出場機会をあまり活かせなかったこともあり、ヴィニ、リーベル・プレートから加入のマスタントゥオーノが一旦レギュラーとして落ち着き、この騒動は収束します。

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しかし7節のアトレティコとのダービーで転機が訪れます。

前半は2-2で折り返したものの、セットプレーの拙守も重なり、後半はシメオネ・アトレティコが圧倒。アロンソの選手交代もチグハグで、チームが混乱してしまいました。

2-5という屈辱的なスコアで敗戦を喫するのです。

特に、肩の脱臼から復帰したばかりでコンディションが万全でないベリンガムをトップ下でいきなり先発復帰させ、それまで好調だったアルダ・ギュレルのポジションを右に回した采配は、「政治的な布陣」(ABC)と大きく批判され、後の会見等でも突っ込まれました。

この大敗はその後に暗い影を落とすことになります。

上層部は、アロンソ・マドリーは中堅〜弱小相手に「義務的な勝利」を挙げているが、ビッグマッチではどうなのか?という疑念を抱くようになりました。

ダービーの大敗で、マドリーがそれまで「なかったことにしていた」パリ・サンジェルマン戦の記憶がよみがえってしまったのです。

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パリ戦、アトレティコ戦と、強豪相手との試合だけを見ればどちらも大敗を喫しており、「ビッグマッチで勝てるのか」がアロンソ・マドリーの大きなクエスチョンマークになったのです。

また、フェデ・バルベルデの話題もこの前後でメディアを騒がせました。

いわゆるボックストゥボックスタイプで、ピッチをところ狭しと動き回るプレースタイルのバルベルデは、アロンソ・マドリーになってから中盤で輝きが消えたと話題になっていました。

そんな中、右サイドバックのカルバハル、トレント・アレクサンダー=アーノルドの負傷が重なり、バルベルデがやむなく右サイドバックに回る必要が出てきました。

バルベルデはこのことについて会見場で「監督の要望を拒否したことはない」としつつも「サイドバックとして生まれたわけではない」と、サイドバックのプレーは求められればするが、本意ではないという趣旨のコメントを残しました。

このコメントのニュアンスは絶妙で、「プレーを拒否することはしないが、新政権の布陣の基盤が固まる段階では本職でプレーしたい」というバルベルデの選手心理が出たものでした。

ヴィニシウスの件に加え、バルベルデが公の場で自分の希望ポジションをはっきり口にした件が重なり、上層部はアロンソへのリーダーシップへの疑問も生まれます。

「エゴの強いロッカールームを管理できるのか」という疑念が生まれている、と一部では報じられています。

アロンソは現役時代2度CLを制していますが、現在のチームは若いカマヴィンガですら2回獲得しています。カルバハルに至っては6回制覇しており、モドリッチ、クロース、ナチョ、パコ・ヘントと並び歴代最多です。

世の中の99%の監督よりも、選手のほうがすでにサッカーの世界では格が上なのです。

彼らに言うことを聞かせるのは、並大抵のことではありません。

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アロンソにのしかかるプレッシャー

現地では、27日のクラシコ、そして11月5日のアンフィールドでのリバプール戦が、アロンソにとっての「マッチボール」であると考えられています。

この2試合が、ビッグマッチで強豪とやれる力があるのか、現在のチームの試金石だと思われています。

先日のCLでは名門ユベントス相手に勝利(1-0)しましたが、直近6戦勝ちなしの相手だったこともあり「クラシコに向けてこれでは不十分」と、あくまでもクラシコこそがテスト本番、というのがメディアの論調でした。

ちなみに昨季のカルロも、ビッグマッチに勝てていない、という批判がつきまといました。

昨季もマドリーはこの時期のクラシコにおいて0-4の大敗を喫します。

「フリック・バルサはハイラインだから、エンバペやヴィニといったスペースの捕食者のマドリーの餌食だ」と言われている中での大敗で、チームに大きなショックをもたらしました。

その後、両チームは3度対戦し、スーパーカップでは再びバルサが5-2で大勝、リーガでは0-2から逆転され4-3で敗れ、コパ・デル・レイ決勝では1-2から延長戦に持ち込まれ、3-2で敗れました。

これらの結果のいずれも、特に最初の0-4が、船出したばかりのフリック・バルセロナの快進撃を勢いづけた感は否めません。

しかし昨季のカルロは、当時は欧州チャンピオン(23-24)でしたし、CLをマドリーに3回もたらしている監督です。信頼のベースが今のアロンソとは違いました。

アロンソの場合、勝ち点の上ではCL、リーグ戦共に優秀で、仮にどちらの試合も負けたとしてもラディカルな決断が取られる可能性は少ないです。

しかしレアル・マドリーはCLのクラブなので、ビッグマッチで勝てないとCLを獲得できません。

そのため、リーグ戦を確実に勝つことよりも、CLでの「最大火力」がどうか、のほうがどちらかといえば重要であり、そこが現在の上層部の懸念なのです。

フロレンティーノ会長にとっては「CLでチームが勝てるか」こそが重要であり、この2試合が、アロンソの周囲の空気と、今後の仕事のやりやすさを決定づける可能性が極めて高いのです。

レアル・マドリーは、2試合勝てないだけで「クライシス」とメディアが騒ぐクラブなので、勝利すればある程度批判は収まるのですが、「ビッグマッチで勝てない」という批判はビッグマッチの勝利でしか払拭することができません。

この2試合の後のビッグマッチはといえば、12月11日のマンチェスター・シティ戦を待たなければなりません。

機関紙であるMARCAも24日「ビッグマッチで結果を残さなければならないのは監督というよりも、昨季から結果の出ていない選手たち」と、矛先を微妙に監督から選手に移しつつも、「ダービーの大敗の後、アロンソがクラシコで自身のプロジェクトの堅牢さを示すべきという風潮があるため、バルサのほうがプレッシャーが少ない」と述べ、「クラシコこそが試金石」という風潮にはっきりと言及しています。

つまり、アロンソがマドリーの監督として「本物なのか」はもはやビッグマッチでしか測ることは出来ず、それがこれからの2試合なのです。

もちろんここで勝てば、アロンソのプロジェクトのこれまでの歩みの正しさが証明され、メディアは掌を返し、アロンソのサッカーの素晴らしさを語り尽くすことになると思います。

しかし仮にここで敗れた場合、「中堅以下には勝てるけども、ビッグマッチでは勝てないチーム」というレッテルを貼られ、アロンソ・マドリーは常に疑念の目線をメディアから向けられたまま、シーズンを過ごすことになるでしょう。

チーム得点の半数以上(28ゴール中15ゴール)がエンバペという、攻撃でのエンバペ依存も今以上に言われることになると思います。

他チームのファンの方は特に、まだ新監督になって2ヶ月じゃないか、と思う方も多いかもしれません。

しかし、レアル・マドリーというのはそういう世界に生きるチームなのです。