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ラ・リーガ再開に寄せて

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ラ・リーガが帰ってきた。

巷では「新たな日常」という言葉が叫ばれている。

サッカー界に関して言えば、公募で決まる名前は何であれ、無観客の試合がそうなのかもしれない。

しかし、セビージャvsベティスの復帰カードを見た限りでは、

La Liga会長のハビエル・テバス、およびオーディオビジュアル担当のエルシオル・ソレールが2ヶ月かけて尽力した、 「バーチャル観客システム」は、スタジアムに必要な空気を少なくともある程度は、担保してくれているように見えた。

もちろん、セビージャvsベティスのような、スタジアムのファンの占める空気が大きなカードでは、 物足らなさを感じるのは当然だ。

その一方で、先に開幕したブンデスリーガの、中学、高校の部活動の試合を連想するような、

選手の声とボールの音だけが響くような閑散とした雰囲気を見ていれば、これは「新たな日常」の大きな進歩に思えた。

EA SPORTSとVizrtのテクノロジーを利用したこのシステムによって、今後リーガのテレビ中継される試合では、

単なるスタジアムの盛り上がりの単調な音ではなく、 試合展開に呼応して、チャンスや、実際のゴールシーンで、それ相応のファンの声が小さく入るようになっている。

急ピッチ

選手たちが通常の全体練習を行えるようになったのは6月からだ。

練習そのものは5月11日から行っていたが、最初の10日間は、ピッチで行う個人練習からのスタートだった。 ゴールキーパー相手にシュートを打つことすら許可されていなかった。

その後、5人、10人づつの集団練習、といったように、

リーガの定めた「4段階の復帰のプロセス」に沿って、 選手たちは慎重に、ハビエル・テバスの兄弟であり、感染学の権威であるパブロ・テバスが定めたプロコトルに従って行動してきた。

スペインの人々たちに、プロスポーツという、残念ながら生活にとって必需ではない産業が、生活そのものがかつての状況でない中、再開するために、真摯な姿勢を社会に示してきた。

プロサッカーという産業がGDPの1.4%を占めるという、スペインの経済的な事情が、復帰の大きな追い風となったのは間違いない。

残りの11試合が行われなければ、そのぶんの巨額のテレビ放映権料が入らなくなり、 ほとんどのリーガのクラブは立ち行かなくなってしまうだろう。

実際に、現在でも、スペインのいくつかのクラブは、 ERTEという、雇用契約を維持したまま失業保険を受け入れる制度を活用し、 選手を含む従業員の収入を7割カットした状態だ。

かつてとは全く同じではないかもしれない。

そしてその再開は、半ば強引な、経済的な理由が優先されたもので 選手たち(と時差に苦しむ極東のファンに)に過度な負荷を強いる 7週間で11試合をこなす激烈な日程かもしれない。

それでも、「新たな日常」に、リーガが加わった。

まずは、それを喜びたい。