みなさんこんにちは。
普段はnoteでレアル・マドリーの現地の空気感、その時々の流れを気ままに書いています。
新シーズンが開幕しましたね。
代表ウィークも明け、これからCLも始まりますし、また本格的な欧州サッカーの季節がやってきました。
今季のレアル・マドリーは大きく変化しました。
昨季はといえば、7年追い続けたエンバペ獲得にこぎつけ、CL優勝チームにエンバペが加わり、鬼に金棒ではないかといった論調がスペインでは支配的でした。
しかし実際には、引退したトニ・クロースの穴と、BMVR(ベリンガム-エンバペ-ヴィニ-ロドリゴ)と呼ばれた4-2-4の布陣を採用したことでバランスが悪く、久々のメジャータイトルなしという結果に終わりました。
もちろん若手を積極的に抜擢するフリック・バルサの大成功が重なったことも要因です。
この結果、4年間のカルロ・アンチェロッティ政権は終焉し、「カルレット」はブラジル代表へと旅立ちました。
そこで今季は、かねてから目をかけていた新進気鋭のチャビ(シャビ)・アロンソ監督を招聘し、全く新たなレアル・マドリーを作ろうとしています。
レアル・マドリーといえば、伝統的に選手が主体のサッカーをすることが多く、アロンソのように戦術を全面に押し出す監督は稀でした。
なので、これまでとはちょっと違うマドリーが見られるシーズンになるかなと思います。
とはいえ、レアル・マドリーが世界で最も政治的なクラブであることは変わりはなく、監督に与えられる自由度は相変わらず低いです。
そうした中で、アロンソ監督には新たな成功像が求められています。
レアル・マドリーは文脈と人間ドラマのチームです。
こうした複雑なチーム事情を少しでも理解できるように、この名鑑を今年も作りました。
良くも悪くもこれまでとテイストが違うチームになっているので、他チームのファンの方も第2の推しチーム候補としてふらっと見ていただければうれしいです。
それではどうぞ。
1. ティボ・クルトワ
昨季は筋肉系の負傷や膝の違和感にやや悩まされたものの、世界最高のGKとして相変わらず圧倒的な存在感を見せた。
当たり前のように他のGKでは止められないシュートをセーブすることから、元バレンシア、マドリーのサンティアゴ・カニサレスは「彼はGKのマラドーナ、メッシ、クリスティアーノ」と絶賛する。
外国人選手ながら、選手が嫌がるテレビインタビューにも積極的に応じ、スポークスマンとしての役割も担っている。
新居を建築中で、現在の住居が450万ユーロで売却されることがすでに決まった。
新居は現在の8倍の広さがあり、10月に完成する。
13. アンドレイ・ルニン
クルトワが健在だったこともあり、昨季は12試合の出場もさして見せ場なく終わった。
昨年契約を2030年まで延長し、年俸は2倍に。
寡黙な男として知られている。
クルトワの壁は高いが、じっとチャンスを待つ。
2. ダニ・カルバハル
右膝の前十字靭帯、外側側副靭帯、膝窩筋腱の断裂。
文字にするだけでおぞましい負傷によって、右サイドバックながらバロンドール投票4位と絶頂にあった彼のキャリアは暗転してしまった。
大怪我にもかかわらず復帰はとても順調で、クラブW杯でピッチに復帰すると、9月には早くも代表に招集済み。
昨季のリーグフェーズのリール戦(1-2で敗戦)では、ハーフタイムに激昂して不甲斐ないチームに活を入れるなど、物怖じせず意見を言える存在で、チームの精神的支柱としての役割も大きい。
3. エデル・ミリタオ
神はミリタオに冷たい。2年連続で前十字靭帯を断裂するという、サッカー選手に起こり得る最大級の地獄を味わった。
一昨年は左だったが、去年は右足。両足に手術跡を抱えることになった。
しかし、一昨年のもののほうが怪我の程度は複雑で、今回のほうが「クリーン」だとメディアでは評されている。
実際、復帰直後だが状態は良く、現状ではリュディガーをポジション争いでリードする。
完全復活の兆しか。見た目に反し声が高い。
4. ダビド・アラバ
2023年12月に負った重度の前十字靭帯断裂(軟骨にも影響があった)および半月板の負傷からの復帰は困難を極め、昨年6月には極秘で再手術を受けたほど。
今年1月に382日ぶりに復帰したが、パフォーマンスは戻らず、事実上DFとしてはアテにできない状態だった。
今年4月は再負傷し、半月板をさらに手術している。
今季は契約最終年だが、ラモスの後釜として三顧の礼で迎えた経緯から年俸がべらぼうに高く(もちろんDFではチーム最高)、契約延長は絶望的。
今季はアロンソ新監督のもと、DFではなく中盤センターの控えからスタート。
12. トレント・アレクサンダー=アーノルド
リバプールからの移籍はマージーサイドからの激しいヘイトを生み、入団会見でのスペイン語でのスピーチはマドリードでは歓迎されたが、地元では火に油を注いだ。
入団後しばらく低調で「早く目を覚まさなければならない」と早速スペインメディアから批判されていたが、第3節のオサスナ戦では高評価を得た。
カルバハルの存在が刺激になったのか、目の色が変わった感がある。
異国で、チームで最も地元民に愛されている存在との競争に挑む。
17. ラウール・アセンシオ
ラウール・アセンシオにとって人生のスピードは早すぎる。
昨年11月9日のオサスナ戦、ミリタオが前十字靭帯を負傷し急遽出番が訪れると、彼の人生は一変した。
いきなりジュード・ベリンガムに素晴らしいアシストを記録し、一躍マドリーのセンターバックのレギュラーとなった。
7ヶ月後、クラブW杯では不振を極めミスを連発。
現在ではセンターバックの序列最下位に低下してしまった。
デビュー前にちょっとした「騒動」があり、裁判沙汰になっている。
背番号は今季から17に。
18. アルバロ・カレーラス
ベンフィカから5000万ユーロで加入した左サイドバック。2020年までカンテラ(ユースチーム)に所属経験がある。
レバークーゼンではグリマルドというボール扱いに長けたサイドバックがおり、そうしたタイプの左サイドバックが新監督には必要と考えられ、獲得に至った。
早々にチームにフィットし、「すでに何百試合もこなしているようだ」とMARCAも絶賛する。
今季退団したとある名物選手の背番号を継いだ。
20. フラン・ガルシア
メンディが怪我、カレーラスが加入前で不在だったクラブW杯では一定のパフォーマンスを見せたが、カレーラスが良すぎて今のところ出番が遠い。
アロンソからの評価は低くないが、使うより使われるタイプで、ボール扱いが重視されるアロンソ政権では古典的なプレースタイルがマイナスとなっている。
出番と反比例するように年々筋肉量が増加している。
22. アントニオ・リュディガー
チームへの責任感から、半月板の痛みに7ヶ月耐えながらプレーしたが、「もう限界だ」とSNSに投稿し、コパ・デル・レイ決勝終了後に手術。外側半月板を数センチ切除した。
手術前はほとんどまともに走れない状態だったが、クラブW杯ですでに復帰。
トレードマークの膝を高く上げるランニングを披露するなど、順調な回復ぶりがうかがえる。
契約最終年であり、上層部は体にムチを打ってクラブのために試合に出続けたこれまでの貢献を評価しているが、高年俸もあり、ハウセンの勢い、ミリタオの復活次第では今季で退団も。
23. フェルラン・メンディ
「守備面では世界最高の左サイドバック」とアンチェロッティに重宝されてきた守備に全振りのサイドバック。
一時期アルフォンソ・デイビスの補強が囁かれても(のちにバイエルンと契約延長)、アンチェロッティは彼をかばい続けた。
その結果契約延長を勝ち取ったが、未だに契約延長セレモニーが行われていないなど、現場とフロントの評価が極端に違う選手である。
ビッグマッチでの守備の安定感は魅力だが、アロンソ監督の戦術との折り合いが鍵となりそう。
左サイドバックはチームに3人おり、激戦必死。
24. ディーン・ハウセン
ボーンマスから5800万ユーロを払って獲得したセンターバック。スペイン国籍だが父はオランダ人で生まれはアムステルダム。
197cmの長身に抜群の配球技術を併せ持ち、「ジャックポットを引いた」とクラブ関係者を喜ばせるセンセーショナルなパフォーマンスを見せており、加入早々ではあるがセンターバックの1番手。
セルヒオ・ラモスが憧れで、入団早々将来背番号4をつけさせてくれとフロレンティーノ会長に直訴し、その肝っ玉で名物会長を驚かせた。
5. ジュード・ベリンガム
2023年に負傷した肩の脱臼を抱えたままプレーしていたが、限界を迎えクラブW杯後ようやく手術を実行。
新監督がチームを固める段階で不在というこれまでにないスタートとなる。
多芸ゆえに起用法が定まらない可能性もあるため、10月の復帰後、チームの大きな柱である彼の役割を確定させるかが重要になる。
アロンソは「セントロカンピスタ」(中盤センター)として見ているという発言も。
昨季アンチェロッティは1試合だけ彼を右サイドハーフで起用したが、クラブ内の重要人物のお気に召さなかったらしく、この起用法はお蔵入りになった。
6. エドゥアルド・カマヴィンガ
昨季は3度の様々な怪我に悩まされ、リーガは19試合の出場のみ。
チームの重要なフェーズに立ち会うことができなかった。
直近でも左内転筋腱の完全断裂から復帰したが、新たに足首を痛めてしまい、アロンソ監督就任後まだピッチに立てていない。
弟分で自然体なキャラクターが愛されており、アロンソも、「彼はチームメイトに愛されていて、それがチームの結束を高める」と、彼の人柄を評価する。
8. フェデ・バルベルデ
カルバハルの長期離脱とルーカス・バスケスの不安定なパフォーマンスにより、昨季は右サイドバックでのプレーが中心。
足首を怪我していた時期もあったが強行出場を続け、昨年はクラブW杯を省いても5000分以上の試合に出場した。
どんな監督でも重宝するタイプの選手だが、アロンソ政権下の戦術では持ち前のダイナミズムが活きず、窮屈そうという声が早くも浮上している。
14. オーレリアン・チュアメニ
怪我人続出の影響で、昨季はほぼ半分の試合でセンターバックとして起用されたが、調子が上がらずベルナベウでブーイングを受ける時もあり、苦しい時間も経験した。
今季は序盤から好調。
3バックと4バックを入れ替える際も、彼のポジションを移すだけでよく、アロンソからも、「基盤となる選手」と高い評価を受ける。
母親がスペイン語の教師。
15. アルダ・ギュレル
スター候補として獲得したにもかかわらず、アンチェロッティ政権下では出番が少なく、フロレンティーノ会長は忸怩たる思いをしていた。
昨季はコパ・デル・レイのレガネス戦では、守備を求められるあまり、その後のプレーが消極的になっているとアンチェロッティに叱責され、1ヶ月近く出番がなくなったこともあった。
前政権では右サイドで起用されてきたが、フロレンティーノ会長はかねてからトップ下であれボランチであれピッチ中央でプレーさせることを希望しており、今季からインサイドハーフにコンバートの上、レギュラーとしてスタート。
彼の「魔改造」の成否が今季のチームの大きなテーマとなることは間違いない。
かつて本職だったアロンソから中盤センターの極意を習得できるか。
19. ダニ・セバージョス
第2節オビエド戦後、突如Instagramに意味深なメッセージを投稿し移籍を示唆。
マルセイユと自ら交渉し、移籍話をフロントに持ち込んだ。
それを受け、クラブ間交渉はあっという間にまとまった。
移籍は目前だったが、セバージョス個人への提示条件が本人としては気になったよう(年俸が現状の半額という噂も)で、クラブ間合意後、移籍を1日考えたいと土壇場で心変わり。
その結果マルセイユがオファーを引っ込め、移籍は破談になってしまった。
希望の移籍金を譲歩するなど、移籍成立のため尽力したフロレンティーノ会長は激怒したという。
とはいえ、貴重なクリエイタータイプで、アロンソは強く残留を望んだとされる。
新たなダンスを白いユニフォームで見せられるか。
7. ヴィニシウス・ジュニオール
バロンドール受賞の本命とされていたが、受賞を逃すと同時にピッチ上でも失速し、後半戦は不調に苦しんだ。
その不振から、リーガ第2節ではアロンソがいきなりベンチに置いたことで、「アンタッチャブルな存在はいないというメッセージだ」とメディアは騒いだ。
プレーエリアが本質的に重複するエンバペとの最適な共存の形も日々議論されている。
今夏の契約延長が既定路線だったが、交渉が難航している。
9. エンドリック
昨季は大器の片鱗は見せたが、出場機会がかなり限られたこともあり、結果を残そうと空回りしてしまうシーンも多かった。
シーズン終盤に太ももを負傷し、オフに再発。復帰は10月とされている。
すでに結婚し、ハネムーンとしてオフに日本を訪れた。
ゴンサロ・ガルシアのトップチーム昇格を受け背番号が変更され、今季から9。
10. キリアン・エンバペ
紆余曲折あった入団経緯もあり序盤はプレッシャーに苦しんだが、徐々に調子を上げるとリーガ31ゴールで欧州得点王を獲得。
センターフォワードのポジションにも徐々に馴染み、結果で批判を黙らせた。
その殺傷能力は格の違いを感じさせる。
今季は重要な局面でのゴールを増やしたい。
背番号9はやはり仮住まいで、今季から10。
スペインに1年しか住んでいないにも関わらず、どういうわけかスペイン語が非常にうまい。理由は全くもって不明である。
11. ロドリゴ・ゴエス
夏を通じて移籍の噂がメディアを騒がせたが、移籍金も年俸も高く、さらには本人の残留希望が多くのクラブから敬遠され、残留。
クラブは彼の売却資金でアロンソに中盤センターをプレゼントしようと考えており、大物代理人ピニ・ザハビの力を使って売り込みをかけたが、空振りに終わった。
これまでは本職ではない右サイドで起用されてきたが、今季は左サイドでヴィニとポジションを争う。
16. ゴンサロ・ガルシア
数ヶ月前までBチーム(レアル・マドリー・カスティージャ)の選手だったが、体調不良のエンバペに代わりクラブW杯でいきなり先発に抜擢されると、4ゴールを上げ大会得点王。
一気にトップチーム契約を勝ち取るシンデレラ・ストーリーだった。
怪我から復帰するエンドリックとセンターフォワードの控えを争う。
3人が争うセンターフォワードは「オーバーブッキング」と言われているが、勢いを持続できるか。
万能のプレースタイルが売りで、身長(182cm)の割にヘディングも強い。
21. ブラヒム・ディアス
狭いスペースでこそ真価を発揮する技巧派アタッカーで、試合を変える能力の高さから「ジョーカー」と多くのメディアで表現される。
これまでは「ガラスの天井」に阻まれ、12人目の選手以上にはなれなかったが、開幕スタメンを勝ち取るなど、アロンソの評価は高い。
ロドリゴが左に回ったことで、今季はマスタントゥオーノとのポジション争いに挑む。
30. フランコ・マスタントゥオーノ
次世代の「アルゼンチンの10番」として数年前からマドリーがスター候補生と目をつけていたクラシカルなゲームメーカー。
タイミングを見ていずれ獲得する予定ではあったのだが、今夏、突如としてパリ・サンジェルマンとの交渉が一気に進展。
ルイス・エンリケと電話をするところまで話は進んだ。
そこからパリを目の敵にするフロレンティーノは使者を次々にアルゼンチンに派遣。
なりふり構わず獲得に動き、結果的には6300万ユーロで獲得にこぎつけた。
クラブの期待は大きく、構想ではいきなり右ウイングのレギュラー。
入団会見で最高の選手を聞かれると「メッシ。僕はアルゼンチン人だから」と正直に答え、ファンがざわついた。
監督 チャビ(シャビ)・アロンソ
現役時代、モウリーニョ、アンチェロッティ、ペップと錚々たる面々から指導を受け、レバークーゼンでは無敗優勝を達成。エリートコースを歩んできた。
これまでレアル・マドリーでは、アンチェロッティやジダンなど、選手を尊重するマンマネジメントに長けた監督が成功するとされてきた。
一方で、アロンソは自身のカラーがはっきりとある監督であり、「介入主義」であるとスペインメディアは言う。
チームをコレクティブ(集団的)にすることが求められているが、伝統的なレアル・マドリーというチームカラーから、組織的でもスターが目立つチームづくりも同時に求められる。
最大の問題は、現役時代の自分がピッチにいないことか。
レバークーゼン時代は3バックの使い手だったが、フロレンティーノ会長が4バックを好むことから、今のところは主に4バックを使っている。
会長 フロレンティーノ・ペレス
7度のCL優勝を達成し、経済を見抜く目と圧倒的なメディアコントロールで王政を築く78歳ラスボス系スペイン人男性。
昨季はメジャータイトルなし。
加えて13億ユーロ以上を投じた、集大成的プロジェクトのスタジアム改修に大きな問題が発生。
スタジアム改修によってベルナベウをコンサート会場としてマネタイズする予定が、周辺住民との騒音問題が勃発。
規定のdB数以内にライブ音響を抑えることができず、住民と裁判にまで発展し、現在でも解決のめどは立っていない。
自身に降りかかる火の粉を振り払うため、人気者のアロンソに目をつけた。
監督を「必要悪」と考え、あくまで選手(と自分)が中心と考える人物だが、こうした背景からか今季は珍しく監督のカラーが全面に出るチームを志向している。